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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

旧通商産業省の葛藤

(客を税務署員かとの懸念を持った亭主が)

「商社ねぇ。貿易戦争とか何とかで、この先大変でしょうね。自動車なんかだって、向こうが本気でわっと入ってきたら、イチコロだっていうじゃねえですか」

「規模がちがうからな。いま日本で一番売れてる車種だって、月産5千台まで行っていない。ところが向こうは万単位、多いのは10万単位だ」

「それじゃ、とても勝負になりませんねぇ」

「それを勝負しなくちゃいかんから、たいへんなんだよ」


「官僚たちの夏」(城山三郎著 昭和55年11月初版)f0020352_11204827.jpg
の商社員を装った通産省(当時の「通商産業省」。2001年1月の中央省庁再編で現在は「経済産業省」)の役人と居酒屋の亭主との会話。

最近、NHKでドラマ化され放映された・・・・が私は観ていない。
大河ドラマもそうなのだが、画像が綺麗すぎたり(特に時代物ではもっと泥臭い映像が好ましい)、役者に美男美女を使うのも気に入らない(笑)。
映像を観ていないから、配役さえもわからない。でも、原作には興味を覚えたので読んでみた。

主人公が極め付きの個性的人物で、取り巻き連も面白く設定されていた。(・・といっても、実話をフィクション風に扱われているから、実在する実物)

物語の背景は、
戦後の高度経済成長の過程における(当時の)通商産業省の役人が法案化しようと画策した「指定産業振興法」を巡る確執が描かれている。

 この物語は、「特定産業振興臨時措置法」をベースにしたもののようである。
この法案は、1963年(昭和38年)から1964年(昭和39年)にかけて内閣が国会に3回にわたって提出した法案で、いずれも審議未了で廃案になった。

 欧米の企業規模の拡大に対抗するためには何時までも保護貿易主義では太刀打ちできない。
国内の企業規模の大型化は必死の情勢に鑑み官民一体で取り組まねばならない
・・・との発想から出たものではあったが。。。。

 貿易の自由化という外資参入の危機感から、通産省企業局が立案し、同局課長らと共に推し進めた「国内産業向けの合理化構想」の法案であった。

1962年(昭和37年)、フランスを手本にして提唱した。
(小説では、キァリア組にもかかわらず志願して特許庁の課長に身を置き、フランス語の夜学に通う牧順三が、やはり希望してフランスへと渡り、勉強の成果をもとに法案の準備に奔走する設定になっている)

フランスの手本は
「企業の大規模化のためには、民間だけに任せたのではダメで、政府が権力を持たずに民間と平等の立場で参加する、との官民協調の推進策」であった。

 経団連会長は「形を変えた官僚統制」として反対などもあって具体化しなかった。
この法案は、通産省、金融界、産業界の三者の協調による経済体制を目指したものであったが、野党、業界、全銀協などが反対の立場をとった。

また、この法案を巡って通産省内での対立もあった。
これらの省内での確執や業界の説得の様子はこの「官僚たちの夏」で巧みに描かれている。


日本は、その後国内の事情にかかわらず否応なしに国際競争の波に巻き込まれ貿易自由化へと急速に突き進んでいった。
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by m-morio | 2009-11-01 11:26 | | Comments(0)