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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史  核の諸問題 3

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■イランの動向

◇イランは、「核開発」は平和目的だと主張している。
しかし、欧米諸国はこれを納得せず、新たに経済制裁を科す構えを見せている。
一方、中国を初めとして中東諸国には、制裁に異を唱える国もある。
この対立はますますエスカレートしそうである。今後の展開が注目されている。

◇まず、イランの核問題のポイントは何なのか。
そもそも論から入ると
「ウラン」という原子力発電にも核兵器にも使える物質の扱いが問題なのである。
ウランには、核分裂しにくい「ウラン238」というのがあって自然界の99.27%がこれに該当する。
一方、「ウラン235」は、核分裂を起こしやすく、自然界の0.72%が相当すると言われている。
従って、核燃料になるのはこの「ウラン235」である。
そして、核燃料として利用するにはウラン235の濃度を高めることが必要になる。
これが「ウラン濃縮」。
多数の遠心分離機を使って、繰り返し濃縮作業を行って濃度を高めていく。
原子力発電用には、3%から5%程度の濃度が必要であり、核兵器にするためには90%以上に高める必要がある。





◇では、イランの水準はどの程度なのだろうか。
現状では3.5%と言われている。つまり発電用に必要なレベルの濃縮活動に留まっているといえる。
そこで欧米諸国は、未だこのレベルのうちにイランからウランを手放させ、簡単には核兵器に転用できないようにしようと、昨年(2009年)秋に、イランと協議をした。
イランの濃縮作業は現在2ヵ所で行われているといわれるが、1ヵ所は稼動しているが、もう1ヵ所は建設中のようである。
アフマディネジャド大統領は、これに加えて新たに国内の10ヵ所に、ウラン濃縮施設を建設する考えがあると発表した。(09.11.30読売)
イラン政府は、「核兵器の開発には一切手を染めていない」と強調しているが、欧米各国はこの主張を信用しておらず、イランに対して国内でのウラン濃縮を停止するよう要求している。
代案として次のような方法が提案された。
イランが製造した低濃縮ウラン、濃度3.5%のものの大部分をまずロシアに運び、ロシアでおよそ20%の濃度まで濃縮する。
そして、さらにこれをフランスに運んで、ここで核燃料棒に加工して、製品となったものをイランに戻すというものである。
これだとイランも核燃料を手にすることができる。

これに対して、イランは低濃縮ウランを運び出す量や回数、加工された製品の授受などについて逆提案をしている。

しかし、イランにとって一番問題なのは、
「国外に出したウランは本当に燃料棒という製品になって戻ってくるのだろうか」
ということ。
つまり、大事な低濃縮ウランをいったん国外に出したら、それが欧米諸国に取られてしまうのではないかという不信感が払拭できないのである。
イランに対しては、いま、国連安保理の制裁が科せられている。
その制裁下では、国連加盟国は、イランに核物質を提供することを禁じられている。
だから、イランとしてはいったん手放した核物質はもう戻らない可能性があるとして拒否している。

◇欧米諸国はイランを信用していない
その理由一つは
イランが過去に行った核開発に関して、必ずしも十分にその説明がなされていないこと。「だから信用できない」という。
「平和利用が目的だ」とするイラン側の主張を鵜呑みに出来ないと考えている。
そもそも、イランの核開発については、イランが自発的に公表したものではない。
国外に拠点を置くイランの反体制組織が“暴露”したものである。(2002年8月)
そして、いま建設中の2つ目のウラン濃縮施設についても、欧米の情報機関の調査(衛星写真など)でその存在が明らかになったのである。
イランのいろいろな行動パターンが「どうも疑惑がある、胡散臭い」として、不信感を募らせているようである。

本質的にイランには信頼が置けないというニュアンスがある。
例えば、イランと米国の関係。
1979年の「イスラム革命」(米国の援助で進めてきた近代化も、王政崩壊で頓挫)
同年11月、テヘランの「アメリカ大使館占拠事件」
1980年4月のイラン・米国関係断絶。
この頃から、イランが米国の崩壊をあらゆるところで画策していて、さらには国際社会の秩序に対する脅威になっているという思いから事が始まっている。

◇水掛け論か
イランは「平和利用が目的」といっている。
一方は、額面どおりには受け取れないとする。
イランが何らかの情報をまだ隠しているのではないか・・・という疑心暗鬼もある。
それを突きつけられるとイランは、
「自分たちはキチンと深刻をした」
「NPTの保障措置に従って、査察も受けている」。
やましいところは無いのにいつも疑いの眼を向けられ国際社会からつまはじきされるような構造があるというようにイランは受け止めるのである。

◇核開発に拘る理由
1 一つは意地でやっている。イランには、NPT・核拡散防止条約の枠組みの中でやっているという自負がある。言い換えれば、「これは正当な権利である」ともいえる。
それに対して、「開発してはならない」という差別的な扱いへの反発があるのだろう。
2 「イランが核兵器の開発を行っているのではないか」という疑惑を、逆手にとって、それを自分たちの「安全保障上の盾」に使おうとしている。
要は、「あいまい」にしておくことで、戦略的に優位な立場に立とうとする政策をとっているという側面もある。
・・・「ひょっとしたら、イランは核兵器を持っているかもしれない」
と思わせることによって、自分たちの立場を有利にしようとしているのかもしれない。

イランは、
「いったん核の技術を確立してしまえば、欧米と渡り合っていくための強力な交渉カードになる。あるいは、敵の攻撃を防ぐための抑止力になる」
と考えている。
これは北朝鮮のやり方に似ている。
さらに、イランが、核施設の場所や使い道を「あいまい」にしているのは、敵対しているイスラエルと同じやり方なのである。
加えてイランは、核開発計画を「国の名誉をかけたプロジェクト」と位置づけている。
核開発を、イスラム体制を維持し、ペルシャ湾岸地域の大国となり、覇権を握るための「切り札」と考えているのではないかとも言われている。
周辺のアラブ諸国は、イランを、そういう警戒の目で見ている。

◇各国の反応
国際社会の足並みが揃っているわけではない。
「核兵器を開発しているのではないか」というイランの脅威をどのように見るかによる。
ロシアは、
イランに対してだいぶ懐疑的な姿勢を見せるようになってきている。
中国は、
イランにおける経済権益が拡大しているので、イランを制裁下においてしまうと、自分たちの経済活動も制約されるので、経済制裁を「よし」とはできない状況にある。
こうしてみると、国連安保理で合意が得られなければ、多くの国が同調するような、あるいは同調せざるを得ないような制裁は適用できないと理解しなければならない。

◇今後の展望
識者(日本エネルギー経済研究所理事田中浩一郎氏)の意見によれば、
「制裁」によってイランの行動が変わるという可能性は、当面はないだろう。
変わるという期待は持てない。
イランが行っている濃縮活動を放棄させること、あるいは、止めさせることはできないという。
では、何を目標にしてイランと交渉するのか。
「最終的にイランが核兵器に手が届くのを阻止するのが目的なのか」
「イランに核兵器への転用が可能な技術を一切持たせないようにするまで、踏み込んで制裁や政策を行うのか」
に分けて考えなければならない。
今のところ、後者が圧倒的だ。
しかし、現在イランが持っている技術をゼロにするということは、もはやできない。
後戻りはできない。
現実的には、最初のほう、つまり、「兵器転用をさせないこと」に重点を置かざるを得ないのではないか。
つまり、「平和目的」の枠の中に収めておく。。。。

そのために、取りあえず、「ウラン濃縮は正当な権利である」というイランの主張自体は、認めざるを得ない。
ただし、それが兵器転用されないような、二重三重の網をかける。
ただ、注意を要するのは、それをイランに「押し付けた」という格好にすると、「なぜ、イランだけに厳しくするのだ」と反発される。
そこへ持っていく行き方が肝心である。


なかなか両者の着地点が見つからない。
イランは、「濃縮活動は放棄しない」、欧米側は、「兵器転用できるような技術を持たせようとしない」と主張している。中間点がない。
そこに現在の、交渉が行き詰ってしまう原因がある。

◇気になる国
イランの核開発については、中東では、イスラエルが非常な警戒心を持っている。
イスラエルは、この状況をいつまでも座視しているとは考えにくい。
敵対する国が核兵器につながる技術を持つことを、イスラエルは決して容認しない。
過去には、イラク、シリアの施設を空爆で破壊したという前例がある。
ネタニヤフ政権は、イランの狙いを「核兵器の獲得」と断定している。
しかも、イランは中距離弾道ミサイルを保有しているので、「国の存亡がかかった重大な危機」と見ている。
もし、制裁の強化が実現してもイランの核開発にブレーキがかからなければ、核施設に対する軍事攻撃も辞さない構えなのである。
日本の対応については外務省のHP参照。
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by m-morio | 2010-03-17 10:17 | 市民カレッジ | Comments(0)