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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史  核の諸問題 10

■「核なき世界」は可能か?→「核兵器なき世界」

講座最終回のテーマである。

まず、この「核なき」という表現について、講師から「核なき」とは全ての核をなくすという意味だろうか?との問いかけがあった。
あれっ! 私は、頭から「核兵器なき」という趣旨と受け止めていたので・・・。
報道でもまちまちな表現をしているようだ。
プラハでのオバマ演説の原文で確認すると “nuclea weapon” とあるので「核兵器」と表示するのがベターのようである。
米国大使館のHP(和訳)にも「核兵器なき世界」と表記されているので、今後はその様に記載することにする。f0020352_14445967.jpg

「原発は必要か?」との問いかけと同様にこれも難問である。
簡単にYes、Noでは答えられない。
オバマ演説から間もなく1年になろうとしている。
米国内では医療保険の国民皆保険制度の導入が議会を通過し、オバマ大統領もほっとしていることだろう。
「核問題」はこれから本格的に取り組んでいくのだろうが、その推移を見守りながら、いろいろな疑問・問題・話題を列記して本稿を終えることにする。

ご参考:
核の問題 1 主な条約等の説明
核の問題 2 北朝鮮の動向
核の問題 3 イランの動向
核の問題 4 イスラエルの動向
核の問題 5 雑談
核の問題 6 原発の基礎知識
核の問題 7 原子力発電 その1
核の問題 8 プルサーマルの仕組み
核の問題 9 原子力発電 その2



◇オバマ大統領の演説
アメリカのオバマ大統領は2009.4.5チェコの首都プラハで演説し「核兵器のない世界の実現」を目指すと表明した。
オバマ大統領は、「わたしが生きている間には実現不可能だろう」と、その困難さを認めながらも、道を切り開いていく決意を強調した。

まず、演説のポイントを整理する。

核保有国として、核兵器を使用した唯一の国として、米国に道義的な責任がある。 核兵器なき世界に向け具体的な措置をとる。
・・・原爆の使用を誤りだったと認めたわけではない。しかし、過去に「責任」について言及した大統領はいなかった。核問題に取り組む真摯な態度が伝わると評価されている。

ロシアと新たな戦略兵器削減条約を年内(2009年)に締結し、他の核保有国にも参加を求める。
・・・昨年12月に期限切れとなっている第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約がやっと最終合意に達し、(2010年)4月8日チェコの首都プラハで調印する運びとなった。
調印後の「批准」がスムーズに進むことを期待する。

全世界的な核実験禁止のため、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に向け、まい進する。
・・・米国は、このCTBTの未批准国の一つである。米国前政権がブレーキをかけてきたもの。議会内の保守派や軍部からは激しい抵抗も予想されると報じされている。障害を乗り越えて指導力を発揮して欲しいとの声も多い。

核兵器製造を断つため、「兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約」の交渉開始を目指す。
・・・条約の交渉推進を見守ろう。

核拡散防止条約(NPT)体制を強化する。
・・・5年に1度の再検討会議が5月にニューヨークで開かれることに決定。

世界の核不拡散体制が直面する試練が二つある。
1 北朝鮮のように核拡散防止条約・NPT脱退を宣言して、核兵器開発に公然と突き進む国の存在である。NPTの枠組みでは、いったん脱退した国に効果的な対応は出来ない。
2 原子力「平和利用の権利」を盾に、核兵器にも転用できる、ウラン濃縮や再処理といった核燃料技術の取得を目指す国の出現である。イランがこれにあたる。原発見直しの機運が盛り上がる中、核燃料の独自生産を志向する国が増える懸念が強まっている。

テロリストによる核兵器の入手を絶対に阻止する。
・・・核拡散がテロリストの核保有の可能性を高めると懸念している。
 世界的に原発の新規導入の動きがある。それに伴い、安全性や核拡散防止を巡る国際的な取り組みが課題となる。原子力産業の育成は施設建設から安全管理まで技術的ノウハウの蓄積が必要である。原発の場合は運転開始まで10年以上かかると言われている。
ウラン燃料や使用済み核燃料の再処理の能力は核兵器に応用でき、核拡散につながる恐れがある。

核拡散防止構想や核テロ防止構想を持続性のある国際的制度とするため、1年以内に、「世界核安全サミット」を主催する。
・・・世界には、部外者の進入阻止や放射能対策の不備が指摘される施設がある。
これらがテロリストの略奪の標的になりかねない。
サミットは、これらの施設を狙う「核テロ」阻止が主要テーマになる。4月12、13日にワシントンで開催される。
世界がオバマ構想についてくるか。4月のサミットと5月のNPT再検討会議の二つの会議がその行方を決めるのかもしれない。

◇地球温暖化と原発
 先ほど、
「凍らぬ海」という番組を観た。
オホーツク海の流氷が減少し生態系に異変が起きていると報告していた。
地球の温暖化の影響なのだろう。
温暖化の原因の一つといわれるCO2の削減、エネルギーの見直し、その一策としての「原発」という流れなのか。
原発への期待は増幅しているようである。

過去に大きな事故があった。
1979年 3月 米国、スリーマイル島で原発事故
1986年 4月 チェルノブイリ(旧ソ連・現ウクライナ)の原発事故
1995年12月 「もんじゅ」でナトリウムが漏出し火災事故。現在休止中で、(2010年)3月中再開を目指しているが4月以降に伸びる見通し。
しかし、こうした事故による原発否定ムードから立ち直りかけている。
潮流の変化であろう。

 現在、31カ国で435基の原発が稼動中である(2008年1月)。
米国も原発再開の方向に向かうと表明し、殊更注目されるのが、原発を持たない新興国(43カ国)が新たに導入を計画していることが世界原子力協会の調査で分かった。(09.05.24)
今更言うのも憚られるが、原発は、温室効果ガス排出量が少なく、原油や天然ガスへの依存軽減にも役立つと再評価され、新興国の導入が進めば、原発保有国の数は大幅に拡大する。
核兵器開発技術の拡散防止、安全管理などの課題も一層深刻化しそうである。


さて、そろそろ本稿も締めくくらねばならない。

原発の新・増設が新聞の1面を埋めていた。
繰り返すが
既存の原発、新・増設の原発が稼動するには、安全管理と、ウラン・プルトニウムの管理、そして、核燃料サイクルの維持、核廃棄物の処理が大切であることに触れてきた。

特に、新・増設にばかり目を奪われること無く、「出口」に意を尽くし、ロード・マップをしっかりと作成した対応を望みたい。

いま日本では再処理工場が停止し、廃棄物の処理もその先行きが不透明な状況にも関わらず、54基の原発は休むことなく稼動し電力の3割を賄っている。

先日、報道でこんな記事を目にした。
「核燃料バンク」である。

低濃縮ウランを常時備蓄し、各国の要請に応じて、市場価格ですみやかに供給する仕組み。
国際情勢や調達先との外交関係に左右されない、核燃料供給の保証体制を整えて、核兵器製造にも転用できる濃縮施設を各国が自前で持つのをあきらめさせるのが狙いである。

核燃料バンク創設を模索する動きは、イランの秘密濃縮活動が2002年に発覚したのを契機に米欧やIAEAで活発化した。イランは、今も「将来の濃縮ウラン確保の不安」を理由の一つにして濃縮活動を続けている。
米欧は、核燃料バンク創設を、イランに濃縮活動断念を迫るテコにしたい考えである。

原発の新・増設が計画され、濃縮ウランの需要拡大が見込まれ、連動して独自の濃縮施設を持とうとする国が続出する懸念が高まっていることから、核燃料バンクの創設を急ぐ動きに繋がっている。

日本には、(世界的に見ると)規模が小さい青森県六ケ所村の濃縮施設がある。しかし、休止中である。もしも、この施設の存在・維持に難(地元の反対など)があるのであれば、また、今後国内で再処理施設需要が高まることを考えると、設備を増やすよりもこの「核燃料バンク」の仕組みの創設を後押しするのも一つの判断ではないのだろうか。
(完)
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by m-morio | 2010-03-27 14:49 | 市民カレッジ | Comments(0)