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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史 アメリカとイスラエル 3

視点を変えて、イスラエル国民が自分の国をどう見ているのかに触れてみる。

▲ユダヤ系住民の苦悩
ユダヤ系住民には「兵役」の義務がある。兵役拒否や軍批判は裏切り行為だとの意識が強い。
しかし、一方で”兵役拒否”が増えているという。数年前の推計で、徴兵年齢に達しながら男性の4人に一人、女性の4割が何らかの理由で兵役を免れているという。

国が豊かになり、高学歴と語学力を身につけた若者は、兵役に縛られ、常に 「次の戦争はいつか」 (1970年代まで4度の中東戦争を経験している)との警戒感に迫らる社会から相次いで脱出し始めている。
頭脳流出という深刻な問題である。

移住したユダヤ人の言葉
「ユダヤ人としてイスラエルにいる限り、否が応でも占領者の一員だ。」
「イスラエルでは常に、パレスチナ人の憎悪の目にさらされている。」
「(イスラエルに)帰国したら、予備役に応ずるが、一度アメリカの自由な生活を知ってしまうと帰るのは難しい。」

民間機関の2008年の世論調査で
30歳未満の若者のうち「イスラエルに帰属意識がある」と応えたのは48%。1993年の73%を大きく下回ったことからすれば、これは危機的な水準とも言えるかもしれない。
「長期的にイスラエルに住みたい」と答えたのは約6割にとどまったというのである。

ある意味では”国家存亡の危機”とも言えなくも無い。

▲アラブ系住民の苦悩
イスラエルには150万人のアラブ系イスラム教徒が住む。人口の2割に相当する。
しかもその比率は増えつつあるという。
彼らはヨルダン川西岸やガザ地区のパレスチナ人と同じ民族で、イスラエル建国後も領内にとどまり、国籍を取得した。

 「建国宣言」では、「民主国家」であり、「宗教や民族にかかわらず、全住民の平等」を保障している。
アラブ系とユダヤ系を差別しないといっている。

2009年の総選挙では、国会の120議席中、アラブ系政党が11議席を占めた。
しかし、就職や居住での差別は歴然としているらしい。アラブ系の賃金はユダヤ系の60%程度。
また、アラブ系住民に兵役義務がないのだという。

ある世論調査では、ユダヤ系のほぼ半数が「政府はアラブ系住民の国外移住を促すべきだ」と答えたという。
アラブ系住民は占領地のパレスチナ人やアラブ諸国との連帯感、親近感が強く、ユダヤ人にすれば、同じ国民だが、反面、「敵」にも写るということである。
もちろんアラブ系といえども国民としてのさまざまな利益を享受している。
アラブ人としての大義か、イスラエル国民としての実利か。
アラブ系住民の心は揺れ動いている。





▲終わりに

世界におけるユダヤ人の分布状況。それがイスラエルとアメリカに集中し、アメリカにおいてのユダヤ系の成功者の発言力が高く、アメリカ政府が、この”発言”を無視できないこと。f0020352_9465299.jpg

アメリカ政府はもちろん、ロビー活動による金銭の支援が続いていること。

イスラエル国内におけるユダヤ系とアラブ系の格差が歴然としていること。

イスラエルのネタニヤフ首相、リーベルマン外相はともに超タカ派で、対イラン政策においては、場合によってはアメリカの意向を無視してでも攻撃するとの腹を持っている。

そんな環境下において、中東和平の仲介をオバマ政権がやろうとしている。

和平に伴ういろいろな問題があって妥協が折り合わない。
交渉か進むという要素が見つからない。

「簡単には解決しないのが”中東和平の問題”」 
そんな折、次のような記事を眼にした。

2010年10月12日朝日新聞Webニュース
 【エルサレム=井上道夫】
 イスラエル政府は10日、市民権の新規取得者に 「ユダヤ人民主主義国家」 への「忠誠」を義務づける法改正案を賛成多数で閣議承認した。
イスラエルは人口の2割をアラブ系イスラエル人が占めており、「修正は排他的」との批判が出ている。
最終的な法改正には、さらに国会での承認が必要。
 市民権取得に関する現行法は、新規取得者に「イスラエル」への「忠誠」を宣誓することを義務づけているが、 改正案は、国の性格付けとして「ユダヤ人民主主義国家」という言葉を付け加えた。
 リーベルマン外相ら対パレスチナ強硬派が「ユダヤ人国家」という言葉を挿入するよう求めていた。                                 
ネタニヤフ首相は改正理由について、                                                                           
イスラエルはユダヤ人の民族国家であり、この原則が政府の方針や法律の原則になっている」                                      
と説明した。
 これに対し、アラブ系議員は「アラブ人(パレスチナ人)を標的にした修正だ」と反発。                                               
連立政権に加わる左派政党、労働党のヘルツォグ福祉・社会問題担当相も「イスラエルの民主的な特性を脅かす」と修正に反対している。
 国外に住むユダヤ人がイスラエルに移民する際は、別の帰還法が適用され、宣誓は義務づけられていない。


中東情勢の鍵を握る国、イスラエル。
2009年2月の総選挙では、右派勢力が大幅に議席を伸ばし、その後、新政権発足に向け、各政党の協議が続いたが、パレスチナやアラブに対し強硬姿勢をとる右派政党「リクード」のネタニヤフ党首が、10年ぶりに首相に就任。
右派政党やユダヤ教政党を中心とする連立政権を発足させた。極右のリーベルマン氏を外相にすえるなど、これまでの和平を進めてきた政権と比べ、タカ派色の強い政権となった。

政権の中核となる「リクード」のほか、極右政党「わが家イスラエル」と「ユダヤの家」、ユダヤ教宗教政党の「シャス」と「ユダヤ教連合」、さらに、中道左派で、前の政権の連立与党である「労働党」 の合わせて6つの政党の連立政権。

イスラエルが昨年11月から続けていた入植活動の10ヶ月の凍結措置が9月26日で終了したことにともない、ヨルダン川西岸で、ユダヤ人入植住宅の新規建設が再開した。
仲介役のアメリカの意向などまったく無視した行動で、世界中からの非難の眼差しにさらされている。(完)

本稿をまとめるにあたって次の書物などを参考にした

・横田勇人著「パレスチナ紛争史」 集英社新書
・広河隆一著「パレスチナ」 岩波新書
・三井美奈著「イスラエル」新潮新書

その他、新聞報道記事多数
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by m-morio | 2010-10-16 09:53 | 市民カレッジ | Comments(0)