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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史 緊迫する中東・アフリカ情勢③

「シリア」と「リビア」の動静を伝える記事が毎日紙上を飾る。

シリアにおけるアサド政権が窮地に陥っているとの報道があるが、中東におけるシリアの位置づけは軽くない。
万一、政権が倒れた場合の影響を危惧する周辺国もある。
アサド政権と反政権との対立もさることながら、周辺諸国との関係も無視できない。

そこで、「リビア」に移る前にもう一度シリアの周辺について触れておくことにする。

 シリアは、中東情勢に大きな影響力を持つアラブの大国である。
中東の和平問題というと、「イスラエルとパレスチナの問題」と思われがちだが、シリアが絡む諸問題も見逃せない。
例えば、
・イスラエルとの和平交渉の再開
・レバノン問題の平和的解決
・(イスラエルの友好国)アメリカとの関係正常化
などが挙げられる。
                          中東紛争の構図
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▼シリアは、イスラエルと敵対する「イラン」、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」、パレスチナのイスラム組織「ハマス」と、それぞれ、強い結びつきがある。
イランとシリアは、ともにヒズボラやハマスを支援してきた。

イスラエルは、1967年の第3次中東戦争で、シリアと戦い、ゴラン高原を占領し、その後、一方的に併合した。
90年代以降、アメリカの仲介により、両国の間で和平交渉が行われるも、シリアは、一貫して、「第3次中東戦争が起きる直前の国境線まで、イスラエルは撤退せよ」と要求している。
ゴラン高原返還問題では、1メートルたりとも妥協しない姿勢である。

イスラエルとの和平交渉は、アメリカやトルコの仲介で、断続的に行われてきた「間接交渉」も、2年前、イスラエル軍がガザ地区を大規模攻撃し、大勢の死傷者が出て以来完全に中断している。
つまり、イスラエルがパレスチナ人の土地を占領し、ユダヤ人入植地の建設・拡大を続け、パレスチナ人を殺害している間は、和平交渉を再開するつもりはない。
イスラエルが根本的に態度を改め、占領地から撤退をうたった国連安保理の決議を受け入れない限り、交渉には復帰できないという立場をとる。

▼レバノンでは、6年前、親米派のラフィク・ハリリ元首相が大規模な爆弾テロで暗殺された。
この事件をきっかけに、長年、レバノンに駐留し、実質的に支配していたシリアの軍と情報機関がレバノンから撤退した。
総選挙を経て、一昨年、次男のサハド・ハリリ首相により連立政権が発足した。

国連の特別法廷は、今年1月、元首相暗殺事件の訴追手続きを開始した。
特別法廷は、まだ、被告の氏名や所属を公表していないが、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーが訴追されるのではないかと見られている。
ヒズボラは、(シリアとイランの支援を受けていることから)特別法廷の判断を認めないよう、レバノン政府に要求したが、ハリリ首相は、これを拒否。
ヒズボラに所属する閣僚など11人が、1月12日、一斉に辞表を提出し、連立政権が崩壊した。

シリアは、ヒズボラの事件への関与を強く否定している。
シリア自身が関与したのではないかとする報道もあり、こうした疑いをかけられていることに強く反発している。
今後、レバノンで、欧米に近い勢力とシリアやイランに近い勢力との間で、対立が深まり内戦が起こるのではないかとの恐れも指摘されている。

▼米国は、シリアがヒズボラやパレスチナ過激派を支援したことを理由に、シリアをテロ支援国家と位置づけた。
特に、2003年3月に、米がイラクに武力行使したことにシリアが一貫して反対したことで、米国との関係は悪化した。

2004年5月以降、米国製品禁輸、シリア政府所有航空機の米国内離発着の禁止などの制裁措置をとっている。

オバマ米新政権は、発足以来、米国はシリアとの対話を模索する動きを見せている。

レバノンにおけるハリリ首相の暗殺事件の直後に、シリアに駐在する大使を本国に召還しそのままになっていた。これは、シリアの関与を疑ったブッシュ前大統領の政策だったが、オバマ大統領は、新しい大使を6年ぶりにシリアに派遣した。
オバマ大統領になってから、シリアを「ならず者国家」と呼ばなくなったが、依然、米国政府は、シリアを「テロ支援国家」のリストに載せており、経済制裁も続けている。
このような敵対的な措置が解除されなければ、米国・シリアの本格的な関係改善はないだろう。

一方、イランにとって、民族は違っても(イランは、ペルシャ人)シリアの動向は無視できない。
同じように強権的な体制を敷くイランへのデモの波及を占う意味もあるからだ。
米国が、シリアとの関係改善を模索するのは、米国の覇権に異を唱えるイランの孤立を図る狙いがある。
最近、シリアの反体制グループに活動資金約600万ドル(約4億9千万円)を提供していたことが暴露されてもいる。

シリアは、反米を掲げるイランなどと緊密な関係を保ってきて、中東の不安定要因と見られてきたが、実際にはシリア自身が中東の微妙なパワーバランスに寄与している側面もあると言われている。

「シリアの政権が崩壊するかどうかは国内問題に留まらず、地域全体にとっても意味を持つ。イランはあらゆる手段でアサド政権を守ろうとするだろう」

と指摘する声もある。

中東は極めて流動的な情勢にある。
by m-morio | 2011-04-25 14:51 | 市民カレッジ

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