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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

「原発震災」を回避できるか?

手元に二冊の本があります。
①「これからどうなる」~日本・世界・21世紀~ (岩波書店編集部編1983年)
②「これからどうなる21」~予測・主張・夢~ (岩波書店編集部編2000年)
です。

突然、余り馴染みのない書名を掲げました。
実は、今受講している「現代史」の講座で、講師の先生が紹介してくださったもので、一寸興味をくすぐられましたので、図書館から借り出してきました。f0020352_14571197.jpg

①は、ちょうど30年前の1983年に発行された本です。
この年が、岩波書店創立70年にあたるのを機に、各分野の専門家578名を選び出し、それぞれの方に「例えば」という前提で個別にテーマを設定願い、「200字×6枚」として、アンケート方式で発言を要請し、446名の方々が21世紀に向けて、社会のそれぞれの分野がどう変わるか、どうあったらよいかを論じたものです。

②は、21世紀を目前にして、多くの人々が「これからどうなるのだろうか?」という素朴な問いを持ったであろうと想像し、241名の方々が、多様・多彩なテーマで、不安や期待や希望まで記しています。

個々の文章は1200字程度ですが、如何せん700を超えるボリュウムです。
すべてのテーマに興味があるわけでもありません。
そこで、目次から、「原発問題」に触れている項目を探してみました。
30年前の①には該当する記載は見つかりませんでしたが、②に「原発震災」を回避できるか? (著者: 石橋克彦氏) が目に留まりましたので取り上げます。
執筆された時期は、発行年から考えると1999年でしょう。

注目すべき意見が掲載されていましたので
まず、その概略を・・・・・

「21世紀には阪神・淡路を上回る大地震が何度か覚悟しなければならないが、それよりおそろしいのは「原発震災」である。
大地震によって原子力発電所が大事故を起こし、通常の震災と放射能災害とが複合・増幅し合う巨大災害で、日本を壊滅に追い込みかねない。」

「16の商業用原発があり、51基の大型原子炉が稼働している。
政府や電力会社は、原発の耐震安全性は耐震設計指針で保証されているから絶対に大丈夫だという。
しかし、地震学の目からみると、肝心の地震と地殻動と地震動(地震の揺れ)の想定がきわめて不十分で、原発震災は現実的で脅威である。」

・・・と説いています。

さらに、
「1960~70年代に造られた多くの原発が、大地震に直撃されやすい場所に立地している。」
「活断層の上には原発は作らないからM7級の直下型地震は起こらないとして、直下地震はM6.5を考慮すればよいとされているが、活断層がなくても直下のM7級の大地震が起こり得ることは、今や地震科学の常識である。」

「日本中のどの原発も、想定外の激しい地震動に襲われる可能性がある。
その場合には、いちばん丈夫なはずの最重要部分を含めて多くの機器・配管系が同時に損傷したり、多重の安全装置が複合故障したりする恐れがつよい。
その結果、最悪の場合、核暴走や炉心溶融という、「過酷事故」が起こって、炉心の莫大な放射性物質が原発の外に放出され、チェルノブイリ級かそれを上回る放射能災害が生じてしまうだろう。」

「震災地の救援・復旧が放射能のために不可能になるとともに、原発の事故処理や近隣住民の避難も困難を極める。震災地は放棄され、多数の命が見殺しにされて、周辺の膨大な人々も避難しなければならない。」

最後に、
「日本列島の地震現象と人間の技術を虚心にみつめれば、ここで51基もの大型原子炉を運転しているのは狂気の沙汰ともいえる。」

「ところが、驚くべくことに、地震列島・原発列島の住民のほとんどがこの破局的可能性について何も知らず、その結果、原発震災を防ぐ手だてはまったく考えられていない。21世紀に未来の光が射すためには、どうしても原発震災を回避しなければならない。」

「そのためには、社会の価値観の大転換と、政治・経済・社会システムの根底的な変革が必要である。
それができれば、単に原発震災が回避できるだけではなく、21世紀の人類の最大課題である持続可能な文明の創造に、日本も貢献できるだろう。」

と結んでいます。

[付記]として、発行元が次のように追記しています。
「本稿脱稿後の1999年9月30日に、茨城県東海村の民間施設で臨界事故が発生し、わが国の原子力事故で最大の被害を生じた。
これは地震が原因でもないが、原子力の本質的な怖さをあらためてはっきり示し、ここに書いた問題にも大きな教訓を与える。
ところが、今後は最悪の事故を想定してリスクを明示すべしといわれる一方で、政府もメディアも、原発並みの安全対策をとっていれば大丈夫ということを強調し、真のリスクがますます隠ぺいされようとしている。
眼前のことにしか考えが及ばない日本社会の体質は、阪神大震災から本当の地震対策を汲み取らなかったときと同じである。
未来を切り開くためには、真実を洞察しなければならない。」

著者は、
本書での記載で、大地震によって原発が炉心溶融事故を起こし、地震災害と放射能汚染の被害が複合的に絡み合う災害を「原発震災」と名付けて警鐘を鳴らしました。
以後、原発依存からの段階的な脱却、高レベル放射性廃棄物の地層処分を、地震が多い日本国内で実施する計画に関する懸念などを一貫して主張し続けています。
残念なことに、「原発震災」への懸念は、2011年の東日本大震災で引き起こされた福島第一原子力発電所事故で現実のものとなってしまいました。
最近発行された著書に「原発を終わらせる」(岩波新書 2011年7月) があります。
・・・・・1944年神奈川県生まれ。1973年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。
現在 神戸大学名誉教授


 福島第一原子力発電所の事故原因が、地震なのか、津波なのか、それらの複合によるものか、現時点では明確ではありません。
一方、規制委は一部の原発立地地域に活断層の存在を指摘し、今後さらに調査を進める意向です。

折りしも、
内閣府の専門家作業部会は、南海トラフが起こすかもしれない日本列島へ与える影響について試算を公表しました。その被害予想額は220兆円を超えるものでした。
ただし、これには同時に起こり得る原発事故(原発震災)による被害について「あまりにも甚大で、予想もつかない」としています。

予想がつかないほど甚大な被害をもたらすかも知れない地震国日本列島の海岸線を取り巻いて50基もの原発が林立しています。
背筋が寒くなりませんか。


さて、地震専門家が(一部の人とはいえ)ここまで注意を喚起し、警鐘を鳴らしていても、聞こえてか否か、原発の再稼働を認め、民主党政権の「原発ゼロ方針」を見直そうという安倍政権の行動は、まさに「狂気の沙汰」なのではないでしょうか。
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by m-morio | 2013-03-22 15:02 | 市民カレッジ | Comments(0)