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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史: コソボとセルビア 

「現代史」の講座も回を重ねて11回目になりました。受講生も徐々に増えて40名余になっています。毎回、その日の講義の感想や質問を提出することになっています。(任意ですが・・)
先日こんな感想が。。。
「過去の講義は、殆ど記憶に残っていません」と・・・
全く同感です。「高齢者」と呼ばれる人がかなりの割合を占めているのです。脳のキャパシティに限界がある上、老化は否定しようがありません。
私が、ブログに講座の記録を留めておく理由はそこにあります。後で振り返ってみるために。。。(ブログでなくたっていいじゃない・・・と言われると返す言葉もありませんが。。でも、少数の方とはいえ ”読まれている” という緊張感が継続につながっています。)
今回の「ロシア」では、以前に受講したことがからみあっています。旧ユーゴスラビア、EUなどです。冒頭の言葉を聞き、この記録が少しは意味あるものと意を強くしたのですが。。。

さて、本題です。

◇ロシアの復活
いまのロシアには、過去の「偉大なソ連への復活」の思惑がありありと見て取れるような気がします。かつて米国と覇を競った超大国は崩壊し、仲間の東欧諸国は、ロシアを見捨てて、EUやNATOに走りました。この事実はロシアの誇りを大いに傷つけたことは想像に難くないと思います。あの硬派の元KGB(ソ連のスパイ組織)の要員だったプーチン首相にとっては耐え難いことであって、かつてのソ連の威信を取り戻そうと大統領を辞してからも首相の地位に留まり大統領と二人三脚でまい進し始めました。

 このところ石油価格が高騰し、産油国であるロシアには多額の外資が流れ込み、ロシアは好景気に沸いています。ソ連崩壊後のみじめなロシアから完全に脱皮したのでしょう。
これまでロシアは、旧ソ連や東欧諸国には、石油や天然ガスを低価格で提供してきましたが、ロシア離れが進む国には遠慮することなく国際価格で買うよう要求し、交渉が難航すると石油パイプを閉じるという乱暴なやり方で値上げを認めさせたりしてきました。
最近の新聞に・・
 
ロシアとウクライナは2日、来年のウクライナ向け天然ガスの価格交渉を行い、今後3年間で段階的に値上げし、欧州向けの価格水準まで引き上げることで基本合意した。ロシアのプーチン、ウクライナのティモシェンコ両首相が同日、モスクワで覚書に署名。インタファクス通信などによると、両国のガス会社が今後の交渉で価格の詳細を決める。
 ロシアでは当初、ウクライナ向けガス価格を現行の1000立方メートル当たり179.5ドルから400ドル以上への値上げを求める声も出ていたが、交渉妥結を優先し、ウクライナの求める段階的な引き上げを受け入れた。
 ロシアは旧ソ連構成国だったウクライナ向けのガス価格を、欧州向けより割安な価格に抑えてきたが、ここ数年、同国からの料金未払いや価格設定をめぐり対立を繰り返していた。(毎日新聞 08.10.04)

注)旧ソ連は、ロシアを含めた15の「共和国」によって構成されていました。即ち「連邦」です。この「共和国」の内部に、さらに「自治共和国」「自治州」「自治管理区」という行政区分がありました。この「自治共和国」は「自治州」は、民族を単位に構成されています。ソ連が崩壊した後のロシアも、「ロシア連邦」です。
外務省のHPには、政体は「”連邦制”で共和国や州等83の構成主体からなる連邦国家」と記されています。





◇コソボ独立問題
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本題のセルビア・コソボ問題ですが、まずコソボの位置を確認しておきますと、セルビアの一部です。
1 民族闘争
セルビアは、元々は旧ユーゴスラビア連邦の一員でした。第二次世界大戦後に成立したユーゴスラビア連邦は、チトー大統領の下で言葉や宗教が違う多様な民族が一つの国家を形成してきました。(「モザイク国家」と表現されます。) ユーゴスラビアは社会主義国家でありながらソ連とは対立し、ソ連との間の緊張感が国家を一つにまとめてきたといえます。しかし、チトーが亡くなり、ソ連も崩壊するとともに一つにまとめてきた力が失われ、連邦を構成していた5つの共和国が次々に分離独立していきました。
連邦の中心をなしていたセルビアは、これを武力で阻止しようとしたため、内戦が発生し、結局は共和国が全て独立し、セルビアだけが残ってしまいました。
このような経験を持つセルビアの考えは、これ以上の分離独立は許さないという固い意思を示しています。
 コソボの人口はほぼ200万人。ただ、その9割はアルバニア系です。1割のセルビア人による少数支配を維持するために、アルバニア系住民には広い自治権が与えられてきました。それでもアルバニア系住民の独立熱は衰えず、危機感を持った当時の大統領(ミロシェビッチ)は、コソボから自治権を取り上げ、軍隊を出動させて抑え込みにかかりました。このセルビアの強権発動に、欧米各国は批判を強め、99年にNATO軍がセルビアを空爆。この紛争で数千人が死亡し、家を追われた難民は25万人に上るといわれています。セルビアはそれ以降、現在に至るまで事実上の国連の暫定統治下おかれています。

2 NATOの介入
問題は、NATOが介入した辺から複雑化してきました。コソボは自治州といってもセルビアの領土の一部であって、欧米の介入は、領土の保全とか、内政には干渉しないという国際的な原則から外れていたのです。
欧州諸国と米国の考え方では、「国連安保理の決議」というお墨付きを得たうえで、武力行使に踏み切りたかったのです。しかし、ここでロシアが反対。セルビアと同じスラブ民族であることや、欧米主導の紛争処理対して警戒感があったからです。
そこで欧米は、安保理決議なしで、NATOの決定として空爆に踏み切りました。その根拠は「人道介入」という考え方だったようです。
即ち、人権を無視した非人道的な行為が行われている場合には、外国といえども、迫害にあっている人々を救出するためには、武力介入も許されるという考え方です。
ただ、「非人道的」か否かは、誰が判断するのか・・という素朴な疑問も沸きます。
勿論、客観的に判断する人や組織はありません。しかし、コソボ(他にも同様な問題を抱えている国があります)では、民族が違うという理由だけで、たくさんの人が殺されたり、集団で居住地から追い出されたりしました。違う民族を地域から排除する(「民族浄化」です。中国におけるチベット問題でも話題になる言葉です)、これは、欧米の人々には、ナチスによるユダヤ人虐殺という悪夢を連想させるようです。特に欧州にとっては、決して繰り返してはならない歴史の汚点です。そのためには武力行使も已むなしと考えたのでしょう。

3 独立問題
 国連が仲介して、アルバニア系住民とセルビアの代表とで、コソボをどうするか話し合われましたがラチがあきません。そこで仲介した国連は、事実上、コソボの独立を認めるという勧告案をまとめて、07年4月に国連の安全保障理事会に提出しました。結果、アルバニア系はこれを受け入れましたが、セルビアは拒否しました。
国連が、独立承認の案をまとめた理由ですが、第1に、戦火が収まって8年たったその時点でも、対立してきた住民同士の憎しみは消えず、とても元には戻らないと判断したこと。
第2に、貧しいコソボにとって緊急の課題は経済復興でした。それを進めるには中途半端な状態を解消して、国として独立させるのが近道だと考えたのです。
ただし、コソボの独立を認めるにあたって3つの条件をつけました。
その1 コソボの政府をEUの常駐代表が監視・監督すること。EU代表には、民主的でないコソボ政府の法律や決定を覆す強い権限を与えること。
その2 セルビア系住民に幅広い自治権を認める。隣のセルビア本国から直接経済的な支援を受けることを認める。
その3 住民の衝突を防ぐために、状況が安定するまでNATO軍が駐留を続け治安に責任を持つこと。
要するに、当事者同士で解決が出来ない以上、EUが後見人になって、紛争の再燃を防ぎながら、独立国家としての安定を図るという仕組みを示したのです。

4 セルビアがコソボに固執する理由
コソボは、セルビア王国発祥の地であり、セルビア正教会の中心地で、民族としてかけがえのない「聖地」ともいえる場所です。その「聖地」をすんなりと明け渡すことはできないのです。

5 勧告案の採択は・・
 この勧告案については、欧米は賛成。ロシアは「当事者の話し合いを続けるべきだ」として拒否。
反対の理由は、ロシアも民族問題を抱え、コソボの独立を認めると、それが前例となって、国内の民族運動を刺激するのではと懸念しているのです。
 欧米は、ロシアは欧米との関係を悪化させてまでも反対に固執しないだろう・・と楽観視していたようですが、見通しが甘かったようです。
さて、ロシアが拒否権を発動した場合どうなるのか・・それは最悪のシナリオです。
その場合は「コソボのアルバニア系住民は、見切りをつけて、単独で独立を宣言する可能性が高い」、その場合は米国はその独立を承認するであろう、EU加盟国には多少の温度差もあるであろう、と当時は予測されていました。
このように、いったん火がつくと、民族問題の解決が、どれほど難しいかを示す典型的なケースといえるのでしょう。
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上の相関図は2008.2現在です。

◇コソボの独立宣言
ロシアの反対で、「コソボ」の独立は難航していましたが、ついに08.02.17にコソボ(自治州)はセルビアからの独立を宣言し、「悲願の独立」が実現しました。NATO軍を主力とする国際治安部隊16千人が駐留し、EUは2千人の警察要員を増派して治安を維持しました。
これに対して、米国や欧州諸国の多くは承認(日本も)しましたが、セルビアは「独立は無効」と主張し、ロシアも反対していますので、国連への加盟はなかなか難しい情勢にあります。
ロシアの反対の陰には、経済的、政治的理由があることは前述の通りです。
国内外への「連鎖反応」を懸念する一方で、コソボ独立の対抗措置として「グルジア」の親ロシア派地域(南オセチアやアブハジアのこと)の独立を支持しました。
注)前回(08.10.04)のグルジアにおける抗争で触れましたように、現時点ではロシアは一方的に(国際社会の合意を得ることなく)に南オセチアとアブハジアの独立を承認しています。

これらの事柄をもう少し単純化してみますと
こんな図式になるのでしょうか。ロシアの対応には少し矛盾があるようにも感じられます。
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最後にコソボの現状を記した新聞記事を添付します。
不透明さ続くコソボ 独立から半年
コソボが今年2月にセルビアからの独立を宣言してから17日で半年。国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)は機能を縮小、実質的権限はコソボ政府に移っているが、セルビアやロシアの反対でUNMIK完全撤退のめどは立っておらず、コソボの将来は不透明な状況が続く。
 これまでに欧州連合(EU)加盟国の大半や米国、日本など計45カ国が独立を承認したが、承認国数はコソボ側の当初の思惑ほど増えていない。少数民族を抱える国は承認をためらう傾向があるとの見方も。さらに、グルジア紛争の渦中にある南オセチア自治州の議会が、コソボ独立宣言を受け3月に国際社会に対し、独立承認を求める決議を採択するなどコソボ独立が内外に与えた影響は大きい。
 EUは、UNMIK撤退を前提とし、独立後のコソボを監督するため警察官ら約2000人の文民支援隊などの展開を進めているが、やはりセルビアやロシアの反対に遭っている。(北海道新聞 08.08.16)

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by m-morio | 2008-10-13 13:11 | 市民カレッジ | Comments(0)