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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

受け売り 現代史 : ロシアのエネルギー政策とサハリン2

秋期の「現代史」の最後は、 ロシア・シベリアとサハリン~資源の活用と今後の発展~
でした。
講義は、領土問題・民族問題、ロシアにおける極東の意義、サハリンなどにおける開発の現状、さらにロシア、日本、中国の関係までに発展しました。
かなり総花的になりましたので、本稿では焦点を絞って、ロシアのエネルギー政策および北海道と近接した位置にあるサハリンを取り上げてみます。

◇まず石油資源ですが・・・
 一頃に比べますと若干値下がりしたとはいえガソリンの価格ははまだ高水準にあります。エネルギーの問題を考える前に、まず石油資源について考えてみます。
下の資料はエネルギー庁刊:エネルギー白書2007版から転載しました。
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世界の原油埋蔵量(確認分)は、2005年末時点で1兆2,007億バレルであり、これを原油生産量で除した「可採年数」は40.6年となっています。1970年代の石油ショックの時には石油資源の枯渇問題も懸念されましたが、追加石油資源の発見で、1980年代以降、この「可採年数」はほぼ40年程度の水準を維持しているといわれています。
現在、世界最大の確認埋蔵量を保有しているのはサウジアラビアであり、世界全体の22%のシェアを占めています。以下、イラン、イラク、クウエート、アラブ首長国連邦、そしてベネズエラと続き、このOPEC6カ国だけで世界全体の石油確認埋蔵量の約三分の二を占めています。非OPEC産油国では、旧ソ連諸国、アメリカ、メキシコなどが続きますが、特に中東OPEC産油国の資源が大きくなっているのが現状です。





◇ロシアのエネルギー政策
 石油・天然ガスを含めたエネルギーの大きな産出国であるロシアにおいて、そのエネルギー政策を方向転換した時期があります。
即ち、2000年に就任したプーチン大統領は、2003年頃からエネルギー産業に対する国家管理を強化する政策へと舵を切り始めます。
この政策転換の背景の一つとして、原油価格の高騰があげられます。旧ソ連崩壊後ロシアの石油生産量は低下していましたが、2003年には回復基調となり、上昇しつつあった原油価格とあいまって巨額の石油収入がロシアに流入することになりました。
プーチン大統領は、ロシアが先進国に追いつくには、国内に豊富に存在する天然資源を戦略的に有効活用していくべきであり、これは国家が管理することによって可能となる・・・・
と考えていました。
また、ソ連崩壊後ソ連時代の国営石油会社が分割・民営化される中で、一部の富裕層への富の集中に対し不満が高まり、民営化された資産を再度国営化するという政策がロシア国民の支持を得ていきます。

◇ロシアの実力行使
 ロシアが石油資源などを“武器”に使うという方針を鮮明に示したのが、ヨーロッパ向けパイプラインの一時停止でした。
ロシアから「ベラルーシ」を通ってドイツやポーランド、ハンガリーなど欧州諸国に向けてパイプラインが走っているのですが、このパイプラインの石油の流れが2007年1月、一時停止してしまいました。その理由は、ロシアは、「ベラルーシ」に対して、天然ガスや石油の値上げを通告しますが、この協議がこじれ、ロシアは「ベラルーシ」への制裁として、石油の供給を止めてしまいました。ところがこのパイプラインは欧州諸国にもつながっているので、そちらへの供給もストップするという事態になりました。
結果としては、「ベラルーシ」が折れることによって、供給は再開されましたが、ロシアが石油資源などを“武器”に、欧州に対して強い態度に出られることを誇示した事件として世界が注目しました。
「ベラルーシ」はもともと旧ソ連の一員だった国です。以前に述べたことがありますように、ロシアは、旧ソ連の一員だった国には国際価格よりも安い値段で石油や天然ガスを供給してきました。ところが、2006年以降、毎年、ウクライナなど旧ソ連諸国に値上げの通告をしています。承知のように旧ソ連諸国もいまやロシア離れが進んでいます。ロシアのプーチン大統領にしてみればそんな国々に安く売る必要はない、ということなのでしょう。
このようにロシアの都合で欧州各国の石油供給が安定しないのは極めて問題です。
そこで、欧州各国はカザフスタンなど中央アジアの資源国から、ロシアを経由しないで石油や天然ガスを買い付けるため、パイプラインの敷設を働きかけました。しかし、プーチン大統領は、先を読み先手を打ちます。2007年5月、カザフスタン、トルクメニスタンの両国から欧州向けのガスのパイプラインは、ロシア国内のカスピ海沿いを通るルートで決着させました。欧州へのエネルギーの流れは、今後も“ロシアが握る“と宣言したのです。

◇サハリンの石油資源が取り上げられてしまいました
 ロシアで天然ガスの開発を進めていたら、政府系の独占企業に主導権を奪われてしまいました。いわゆる「サハリン2」問題です。
ロシアのサハリン州で液化天然ガスの開発を進めてきたサハリン・エナジー社は、英・オランダ系の石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事の出資でできた会社でした。その開発事業に対して、ロシアは2006年9月、環境を破壊するとの理由で事業許可の一部を取り消すという行動に出ました。確かに、環境破壊につながりかねない事実はあったようですが、それは口実であってロシアの政府系独占企業「ガスプロム」に権益の過半数を渡せば事業を継続しても良いという、露骨な要求だったのです。
結局、この年の12月になって、三社は過半数の株をガスプロムに売却し、ロシアの政府系企業が主導権を握ったのです。前述のように、ロシアの露骨な石油やガスを武器にした外交はひんしゅくものですが、事実、サハリン2はその典型的な事例となりました。
当時の新聞報道を見ますと
「海外からの投資に冷水~商慣行に反するロシア~」との見出しで、強引な姿勢は国際ビシネスの常識に反する。万一、サハリン2の事業が中止に追い込まれれば、地域経済への打撃は深刻だ。ロシア経済の課題は、エネルギー頼りの経済構造を転換し、幅広い産業の発展を図ることだ・・・とまで論評していました。(06.10.16 道新)
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また、06.10.21付けの記事では次のように書かれていました。f0020352_13513465.jpg
20日、三井物産、三菱商事、英オランダロイヤル・ダッチ・シェル社が出資するサハリン・エナジー社が、「環境破壊をほぼ全面的に認める」との書簡をロシア政府に提出したことを認めました。「いかなる不備も是正する」としています。ロシア政府が求める復旧措置や環境対策に応じる姿勢を示したのです。これは、事業全面停止回避への妥協の何者でもないのでしょう。(この時点でも)環境問題を口実に、政府系企業のガスプロム社の参入や、現段階ではロシア側にとって不利という開発条件の見直しを迫ったのではないかという不信感は拭いきれていない。

◇サハリン2 完成・・・間もなく出荷
ともあれ、ロシア・サハリン州での大型資源開発事業「サハリン2」の施設が完成し、液化天然ガス(LNG)と原油の通年出荷が年内に始まる見通しになりました。
北海道の隣で始まる巨大開発の様子を報道記事から整理して見ます。

場所は、サハリン州の州都ユジノサハリンスクからおよそ車で1時間のところにあるサハリン2のプリコロドノエ基地です。サハリン北東沖の海底から続く長さ800キロのパイプラインの終点。ここで天然ガスを液化し年間960万トンを出荷。その約6割は東京電力や東京ガスなど日本向けで、日本の総輸入量の約1割を賄います。北海道には供給先はありませんが、LNGの確保が難しくなる情勢の中で、日本は今後20年以上にわたる供給源を確保したことになるのだそうです。
不凍港プリゴロドノエ基地の完成で、これまで夏季に限られていた出荷は通年可能となります。東京湾まで船で2~3日で、二週間はかかる中東より圧倒的に有利です。
 ただ、環境面で課題が残っています。サハリン2の原油とLNGを運ぶタンカーは年間250隻ほどになるそうです。すでに出荷を始めているサハリン1と合わせると、道北沿岸の海は年間500隻前後が行き交うことになります。油の流出事故が起きれば、漁業は大打撃を受けかねません。そんな懸念から、先日同州を訪れた高橋道知事も対策の徹底を求めています。
 一方、サハリン2に代わる新たな雇用の確保もサハリン州政府にとって緊急の課題となっています。最盛期の06年には、プリゴロドノエ基地だけで約1万人いた国内外の労働者は、今後300人に減る見通しです。「道路、港、空港などの近代化に、日本の技術や融資」を期待している・・・と州知事は熱い視線を送っているとか。

 工事にかかわってきた日本の人たちも帰国を始めたようです。11月1日の新千歳空港行きは珍しく予約で満席になったとか。日本企業が担当したのは主にプリゴロドノエ基地で、施工したのは千代田化工建設と東洋エンジニアリングが出資した現地企業CTSD。工事で滞在した日本の技術者や商社マンは百数十人におよび、大半は世界中から来た労働者約6千人と簡易住宅で生活してきました。
人々の唯一の楽しみは週末に、会社の無料送迎バスでユジノサハリンスクに行くことだそうです。日本料理店では、1時間以上かけて来た日本人たちがよく一緒になるといいます。そんな光景も終わりました。

◇北海道の現状
 さて、サハリン2の日本への影響に触れましたが、北海道の現状はどのようになっているのでしょうか。
 北海道では、苫小牧勇払で天然ガスや原油の開発が活発に行われています。この「勇払油ガス田」は、道内最大規模で、国内では原油一位、天然ガスも二位の生産量を維持しています。主力の天然ガスはこれまで札幌市内の家庭に供給されてきましたが、昨年11月末に、石油資源開発(株)が苫小牧の勇払油ガス田で増設中だった「液化天然ガス(LNG)製造プラントが完成し、本格稼動しています。年間生産能力は約3万トンから約7万トンへ大幅に向上し、順次釧路市、北見市へ供給する計画となっています。
 一方、石油資源開発(株)においても、地球環境問題への意識の高まりや石油製品価格の高騰に伴い北海道の天然ガス需要に応えるために、供給体制強化の方針で、石狩市や函館市に2010年完成を目処に設備の増設を計画しています。
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by m-morio | 2008-11-06 14:09 | 市民カレッジ | Comments(0)