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はじめのいっぽ

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日々雑感を記録します

Albert Einstein7

博士の日本人観

滞在中に書いた「日本における私の印象」で次のように記している。                 

我がドイツでは、教育というものはすべて、個人間の生存競争が至極当然のことと思う方向にみごとに向けられています。特に、都会ではすさまじい個人主義、向こう見ずな競争、獲得しうる多くの贅沢や喜びをつかみとるための熾烈な闘いがあるのです。家族の絆はもろく、日常生活での芸術や道徳的伝統の影響は比較的弱いのです。

(それに比らべて)日本では、それがまったく違っています。
日本では、個人主義は欧米ほど確固たるものではありません。法的にも、個人主義をもともとそれほど保護する立場をとっておりません。
しかし家族の絆はドイツよりもたいへん固い。
・・・・日本人のすばらしさは、きちんとした躾や心のやさしさにあるということを、われわれ外国人は十分承知していますが、さらに日本社会に対するイメージは、活字になったものであれ、そうでないものであれ、そのようなすばらしさをよりいっそう外国人に強く印象付けているのです。

滞在中に書いた子どもたちへの手紙で・・・
「日本人は、これまで知りあったどの国の人よりも、うわべだけでなく、すべての物事に対して物静かで、控えめで、知的で、芸術好きで、思いやりがあって非常に感じがよい人たちです」
と記している。


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

博士は、生涯に数カ国を訪れ旅日記を残している。
日本旅日記の存在はごく最近まで明らかでなかった。
関係者の努力で翻訳にこぎつけたのが2001年のことである。
原本は、いまニューヨークのピエルポント・モーガン図書館に保管されている。

では、なぜ行方不明になったと思われていた原本を、この図書館が所有しているのか。
それは、Albert Einsteinの死後、アインシュタインの財産管財人がアインシュタイン家の生活費のためにハイネマン財団に売ったというのである。
博士の残した財産は少なく、ドイツの別荘はナチに没収され、ノーベル賞の賞金も、最初の妻の離婚慰謝料に全額支払われた。

そのハイネマン財団がこの図書館に博士の日本旅日記を、アインシュタインの手紙や論文とともに寄贈したのである。

おわりに
博士をして「日本人は、きちんとした躾を受けた心の優しい人たちであり、物静かで、控えめな、知的で、芸術好きで、思いやりがあって非常に感じのいい人」と言わしめたこれらの言葉に、今のこの国の現状を照らしたとき、そこに一抹の寂しさを感じざるを得ないのだが・・・

自戒を込めて・・・
by m-morio | 2006-01-03 19:45 |

by m-morio